今日は月曜日。今週末のチラシの原稿を仕上げるのに手間取り、ちょっと仕事上がりが遅くなった。しかしなかなかの出来栄えに自己満足。時計は午後10時45分。こんな日は温泉にでもつかり、身も心もリフレッシュするに限る……と、適当な理由をつけて私はいつもの芦原グランドホテルへと向かった。
ホテルに着き、入浴券を渡して入場した。1回800円だが6枚つづりの入浴券なら3000円。私はもうどれくらいこの入浴券を購入しただろう。このホテルへの入浴券での貢献度はおそらくトップ3には入るのではないだろうか。ただし、宿泊したことは……一度もない。
なにはともあれ例のごとく混浴露天風呂に入ると……男の酔っ払いの団体さんが7~8人。情緒もくそもへったくれもあったもんじゃないが、まぁ向こうは宿泊客、こっちは入浴のみ。文句など言えようもなく、私は私なりに楽しんで風呂から上がった。
時計は午前0時前。1時間近くのんびりゆったり入浴した私はすっかりご機嫌さんになり、さぁ帰ろうと露天風呂を出たとき、女性4人組とすれ違った。なんと彼女たち、混浴に入ろうかどうか迷っているみたいだった。私は横の椅子に腰掛け、彼女たちの会話にそば耳を立てた。
「どうしよう。なんか男の人いそう」
「でも、せっかくだし入りたいよね」
「せっかくだしね」
「でも……」
そこに掃除のおばちゃん登場。
おばちゃん「おねえちゃんら、今入ると男の人らでいっぱいやざ」
女性客「やっぱり。どうしよう。」
おばちゃん「夜中なら誰もいなくなるで、もうちょっと遅らせたら?」
女性客「じゃ、後で入りに行こっか。」
そして女性客は部屋へと戻っていった。おそらく彼女たちは大学の卒業旅行なのだろう。3月の平日はそういう女性客が多いのを思い出した。
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こんなとき、あなたはどうします?
1.そのまま帰る
2.風呂場へ戻る
私は迷うことなく2番を選択しました。
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再び露天風呂に戻った私はまず時間確認。現在午前0時ちょうどだった。ちなみに私の時計は200m防水のタグホイヤーなので、入浴時も寝るときもしっぱなしでほとんどはずさない。7年も愛用していて、もう私の体の一部分みたいなものである。
露天風呂にはもう誰もいない。女性が入浴するにはもってこいの環境だった。約一名、私がいるけれど(^^;
で、例の女性客らの行動を推測してみた。何時に露天風呂に来るであろう?
「私なら、30分後に様子を伺いに来るね」
その推測のみを心の支えに、私はひたすら露天風呂につかり続けた。
午前0時30分……しかし、彼女たちは来なかった。
「なるほど、まだ0時台だと入浴客がいるもんな。1時までずらしたわけか。」
その推測のみを心の支えに、私はひたすら露天風呂につかり続けた。
午前1時……………しかし、彼女たちは来なかった。
最初の入浴と合わせるともう2時間ちかくは湯船につかっている。もはや指先はしわしわにふやけ、脳みそは7割6分のぼせていた。しかし、ここまできたら帰るに帰れない。
「あと30分……1時半まで待とう……」
しかし私の気力より先にダウンしたのは、なんとタグホイヤーだった。200m防水のはずのタグホイヤーの文字盤に湿気が侵入。内側から曇っていた。
午前1時30分。結局女性客現れず。私は半身不随のタグホイヤーを抱きながら半泣きで露天風呂を後にした……。
~おしまい~