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…ぼそっと独り言 31
「風邪な日」
      
~前置き~
水曜は休みを取って、琵琶湖にバスを釣りに行った。こんな寒い中、 琵琶湖にボートを浮かべて釣りをするのはどうかと思うが、これがまた 面白い!釣り後、鍋をして大騒ぎして大満足で帰宅した。ところが帰宅後 うたた寝したのが失敗。翌日はお店の定休日だと言うのに、頭が痛くて 外出も出来ず、とりあえず温泉に行き、それからは飯食って 部屋で寝ることとした。


~本篇~
それにしても風邪ひいて、せっかくの定休日をふいにしたのがつらい。
しかし頭が痛い。あぁ痛い。ひっで痛い。しゃあない。飯食って 薬飲んで寝よう。

しかし……こんな自己緊急事態な時に限って、両親は遊びに行っていた。
くっそ~~~。わかったわい、自分で夕飯作るわい!

じいさまの給仕も兼ねて、ふらふらのまま夕飯を作った。途中、熱を測ると 37.6度。こう言う時は飯食って薬飲んで寝るのが一番!

(20分後)

そして食事が終わり、イヤな洗物も済ませた。後は薬飲んで寝る状態になった。
そこで家族の薬箱を探した。しかし、薬箱の中にはお目当ての「かぜ薬」は なかった……。

「げ、まじ!!」

出てくるのは全然必要ない薬ばっかり。

「三共胃腸薬」……ちがうぅ!これじゃない!
「オロナインH軟膏」……塗ってどうする!
「正露丸」……いや、今は十分にうんこ固いっす。
「イソジンうがい薬」……これは使えるかも。後でうがいしよう。
「ハートかんちょう」……なぜこんなものが自宅に……。
「蝿取り紙」……絶句……

「つ、使えねぇ……。かぜ薬が全然ないっ!!!!!」

かぜ薬は食後30分が基本である。あせった私は自分の薬箱も 探してみた。

すると、あった♪あった♪パブロン君♪やっぱり風邪には 「早めのパブロン」だよね~。


すかっ

……



からっぽだった……


「おぅえぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

それは魂の叫びだった。怒涛の雄叫びだった。今なくてどうするっ!!!!
しかし、そういえばインドに持っていって使った記憶がある。
ちぃ!補充すんの忘れてた。やはり「後から悔いる」と書いて「後悔」。
熟語はえてして正しい。

仕方なく、薬箱内を再び探し始めた。

「正露丸」……こりゃ、さっきもあった。
「キャベ2」……やっぱ、食べる前に飲む。だよね……じゃない!
「コルゲントローチ」……あぅぅぅぅ。おしい~。なめるんじゃないやつくれ~。
「タケダ漢方便秘薬」……今は詰まってません!後日お願いします。
「コーラック」……どちらかと言うとこっちが好き♪……じゃなくて、風邪薬!
「バイアグラ」……あ、そういえばバンコクで買ってきたままだ。一部          元気にはなるよね……って、固くしてどうするっ!

薄れていく希望の中で、私はとりあえずイソジンとコルゲントローチを 使った。しかし、なんとも詰めが甘い。薬が飲みたいんだ!

そんな時、冷蔵庫に座薬があったことを思い出した。しかし、私は 一人で座薬ができない人間である。ことあるごとに医者か、ばあちゃんに 入れてもらってきた。その姿を、人間としての尊厳を陵辱する姿を 私は自分で出来ないがゆえに、みなに見せざるを得なかった。
私の、一部ゆがんだ性格はここに起因する。

しかし、事は急を要する。私は恐る恐る禁断の扉「冷蔵庫」を開けた。

なんと、そこには半年前に私が医者からもらった風邪薬があった!
嗚呼、神は私を見捨てなかった。


そして、この感動をみんなに伝えたくて、急いでこれを書いてます。

……つ~か、はよ寝ろよ、オレ……


~おしまい~


…ぼそっと独り言 32
私が18歳の春の時の話。
神戸にある甲南大学に合格し、念願の一人暮し。私は両親とともに神戸での アパート探しを始めた。
まずは大学の生協へいき、情報を集めた。しかし3月はアパートの需要期。
なかなかいい物件に出会わなかった。ま、当時はまだバブル期で家賃4万程度 の物件自体が少なかった
のだが、それでも3つほど物件をピックアップすると、 実際にそれらのアパートを見に出かけた。

まず1軒目はJR住吉駅のすぐ横だった。立地は十分。だが、実際に中を見てみると 小さな窓が一つきり。風通しが悪くじめじめしていて一目で却下した。

そして2軒目は大学まで徒歩15分の築30年の木造アパートだった。
これはなかなか良かった。6畳部屋が2つあり日当たりも良かった。しかし さすが築30年。木造で畳に砂壁であった。

で、3軒目は8畳ワンフロアだが幅が2mしかないうなぎの寝床のような部屋だった。
ベット1台分の部屋幅なのである。しかしここには有線がついていた。

私は迷った。築30年にするか、うなぎの寝床にするか。両親はがぜん 築30年を勧めた。だがどうしても砂壁がいやだった。両親の反対を押し切って 私はうなぎの寝床に決定した。

そしてそのアパート(神戸市灘区)が私の大学4年間の一人暮し先となった。

そんな大学4年の1月に阪神大震災は起こった。約30秒の直下型地震。その一瞬で 6000人を超える人間が亡くなった。
私のアパートは一つの階にうなぎの寝床型の部屋が8つもあり、つまり壁の多いアパート だった為、半壊ですんだ。当然部屋の中は散乱したが、建物自体は変形せず、死者も 出なかった。
しかし、築30年の木造アパートは平行四辺形型に全壊していた。死者までは 確認しなかったが、おそらく……。

あれから5年。毎年震災の追悼式を見ると、そのことを思い出す。アパートの選択。
私にとって、それは生きることの選択でもあった。

~おしまい~


…ぼそっと独り言 33
その日は太鼓の練習日だった。

いつも練習した後に、練習場で軽くビールを飲む。心地よい運動の後だけに それがまたうまいっ!!!今日も2本程度空けて心地よくなったところで練習場を後にし、帰宅の途についた。

しかし、今日はまだ飲み足りなかった。そこでコンビニに寄り、おでんを買い込んだ。
「これをつまみにうちでもう一杯♪」
そんなほろ酔い気分だった。

駐車場に着き、おでんをこぼさないように車を降り、うちの鍵を開け、部屋に滑りこんだ。

「あちちっ」

郷ひろみ級のあちちをのたまいながらも、おでんはこぼさなかった。おでんはまだまだ熱い。だが寒い冬の晩酌のあてにはぴったりだった。財布をいつもの定位置である机の上にほおり投げると、財布は勢い余って机から転げ落ちた。しかし私はおでんと晩酌のことで頭が一杯で、そんなことなどほっておいた。

おでんはうまかった。晩酌には生酒「菊水」を1杯。私の最近のお気に入りである。ふと気が付くと深夜12時をまわっていた。しかし酔っ払った私はもう腰砕け状態。そのまま風呂にも入らず、布団の中に転がり込んだ。


~翌朝~


まだ寝ている私を尻目に、母はいつもの如く私の部屋の机の横にあるゴミ箱を空け、朝一でゴミ置き場に出した。何のことはない、いつものことだった。母も何も気が付かなかった。


そのゴミ箱の中には……


昨晩、机から転げ落ちた私の財布があった。


私が気付いた時にはもう遅かった。


私の財布、ゴミ収集車の中で、こっぱみじん。


1万円札もクレジットカードも免許証もこっぱみじんこ。


……あぁ無情。


~おしまい~


…ぼそっと独り言 35
私は大学時代、競技スキーのサークル「アルカディア」に所属していた。他の例に漏れずこのサークルも
悪ふざけが大好きで、高校を出て大学に入ったばかりの純粋無垢な私は、このサークルにてピンクで
ちゃらけた人造人間に改造されたわけである。

そんなサークルの後輩の結婚式が先日開かれた。しかも新郎新婦ともに同じサークルだったので、
2次会・3次会はさながらサークルの同窓会だった。その3次会の席でのこと。

2次会を経て、3次会には約20名ほどが参加した。ほとんどがサークルの先輩・後輩で、飲み会は
酔っ払いの騒ぎ声と悪ふざけ感が漂うアルカディア独特の雰囲気に包まれた。
そんな中、私はこともあろうに先輩集団の中にいた。こんな時くらい組し易い後輩集団を捕まえて、
お山の大将さながら気楽に飲むべきだったが、なぜか私は先輩集団の中にいた。

宴もたけなわになってきた頃、私の左前方に位置する先輩Tが酔って難癖を付け出した。

先輩T 「ささはらな、おまえその髪長すぎるって。」
私   「いや、でも結構気に入ってるんですけどね。」
先輩T 「あかん。俺が切ったる。店員さん、ハサミ貸して~。」
私   「わ~、それは勘弁してくださいっ!!」

なんとか切られることは免れたが、私のテーブルの前にはちょこんとハサミが置かれる事となった。

しばらくして、前方の後輩M及び左に位置していた先輩Mが

後輩M 「でもやっぱり切ったほうがいいですよ~」
先輩M 「ほや、ささはら、もうええやん、切れや。」
私   「もうほんま勘弁してください」

この場もなんとか逃れた。

すると、私の右前方に位置していた先輩Kがその会話の匂いをかぎつけた。この先輩が一番の
危険人物だった。サークル内で数々の逸話を残す彼は行動力&表現力&カリスマともに
すばらしいものを持ってはいるが、悪逆非道能力もケタが外れていて……というより脳みその
タガが外れていて、特に私に対しては傍若無人であった。そんな彼の前にハサミがちょこんと
置かれていたわけである。

案の定、彼は難癖をつけだした。
先輩K 「おまえ、俺に憧れてんねやろ。」

先輩Kも髪が長い。だが真似したわけではなく、私の理想は竹之内豊であった。

先輩K 「じゃあおまえ、俺がこの髪切ったらおまえも切れよっ!」
私   「……え?」

なぜそうなる?ま、でも、いうほど酔ってなかった私は、まさか自分の髪を切りはしないだろうと
たかをくくっていた。

先輩K 「俺がこの髪切ったらおまえも切れよっ!」
私   「え?あの~……」

ここできっぱりとNO!!というべきであった。

先輩K 「俺がこの髪切ったらおまえも切れよっ!」

何度も確認をした先輩Kは目の前のハサミを握ったかと思うと
「ぬがああぁぁぁぁ!!!!!」
と奇声を発し、自分の髪の毛にハサミを当て

ザクッ!!

先輩K 「うらああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

彼は私の目の前に10cmはある髪束を指し示した。

この時点で私の理性のタガが外れた。ここまで挑発されて引き下がれない。3秒前まで
冷静だった私の脳内温度は急沸騰。負けるか魂が全会一致で可決された。

私 「ほんなら私も!!、ずりゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

目の前に置かれたハサミを握り、左手で適当に髪の毛をつまんで

ザクッ!!

私も彼の前に10cmはある髪束を指し示した。

先輩K 「まだまだぁぁぁぁ!!!!」

ザクッ!!

再び彼は気合もろともブチ切った髪の毛を私に示した。

私 「負けるかあぁぁ!おりゃあぁ!!!」

ザクッ!!

悔しいから私も気合で髪の毛をブチ切った。

この時点であっけに取られていた周囲が止めに入った。

そして、テーブル上には2人の髪の毛が散乱した。



~10秒後~

はっと我に返った私は……ちょこっと涙目。
左手で適当につまんだ髪の毛は、一番大事にしていた左前髪だった。

1年半かけて伸ばした私の前髪。ここに散る。しかも無意味な意地の張り合いにて無駄死に。


~おしまい~