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バンコク到着
バンコクの空港に着いた。
「Thank You for ……」
スチュワーデスさんは何事か話して到着を告げる。
私は正直な話、言うほど英語力に自信はない。しかし気ままな 放浪旅行。身振り手振りでなんとかするさとばかりお気楽に 飛行機を降りた。

入国手続きをして空港を出た。空港からバンコク市内までは 空港バスが便利と「地球の歩き方」に書いてある。この本は とかくいいだ悪いだ言われがちだが、何もないよりまし。
テレビは白黒でも映る方がいい。

そんな事を考えながらバス乗り場に向かった。乗り場のおっちゃんに 出発時刻を聞き、待合席にどっかと腰を下ろすと、不意に隣が 声をかけてきた。
「日本人ですか?」
見ると隣も日本人。学生風だった。しばらく話すうちにバスが来た。
彼も今空港に着いたらしく、いっしょに市内に向かうことになった。
彼の名はひろしであった。

予約ナシでかばん一つで放浪する旅人を「バックパッカー(Bag Packer)」と 呼ぶが、バンコクにはそんなバッグパッカーの集まる聖地がある。
それがカオサン通り。アジア最大のこの聖地には1泊300円~800円 の安宿が軒を連ねる。私もひろしもこの地区に泊まる予定であり、 ともにカオサン近くのバス停で降りた。

カオサンは異国情緒にあふれていたが、タイらしくはなかった。街を歩く 人間も白人と日本人ばかり。通りは400mくらいなのだが普通に歩いても 10人は日本人とすれ違うほど日本人が多かった。が、自分もその中の 一人であることに気が付いて苦笑した。

私とひろしは宿を探しだした。しかしシングルルームが空いていない。
何軒か見た上で「NAT Ⅱ」という宿に泊まることになったがここも シングルが空いてなかった。そこでいっしょに泊まることになった。
ついさっき空港で知り合った人間と泊まることになるのも奇妙な気がしたが それも放浪の楽しみ。できれば女のコだったらなおのことよかったが それはそれ。宿を決めた私達は飯を食いに通りに出た。

飯屋を探してぶらぶらして、通りの屋台風の店で飯を食うことになった。
なるほど飯はタイっぽくて良かった。タイ米だし。しかし、辛酸っぱい トムヤムクンは奇抜すぎて全部飲めなかった。とかいいつつビールで 乾杯!そのうちテンションが上がってきた。時間は8時。となるとやはり タイ名物「ゴーゴーバー」に行っとくでしょう。私達はトゥクトゥク (オート3輪車のタクシー)に乗ってバンコクの繁華街パッポン通りに 向かった。

「ゴーゴーバー」というのはタイ女性が露出度の高い服装で踊っている いわゆるショーパブ(たいてい水着)。私達は意気揚揚と席に座った。
席に座るとあっという間にダンサー達に囲まれた。みな一様に
「コーラ プリーズ!」
と色目を使う。わけもわからず3人にコーラをおごるとダンサー達は 私の周りの席についた。なるほど、コーラは指名料なのだ。ひろしも 2人にコーラをおごったみたいで左右を囲まれていた。
あとは日本で言うスナックみたいなものだが、ひろしは片言の英語で 楽しそうに話してるのに、私の周りのダンサー達はタイ語でなんか 言い合いをしだした。どうやら私が先に指名された、いや、私だみたいな 感じでケンカをしだしたのである。客であるはずの私はそっちのけ。
しまいに一人は泣き出す始末。
「ケンカをやめて~♪ 私のため~に~争わない~で~♪」
見てる分にはそれはそれで面白かったが、険悪な雰囲気になってきたので ひろしには申し訳なかったがそのまま店を出た。

そのままカオサンに戻り、ひろしと別れてカオサンのインターネットカフェを ぶらつき、宿に戻ると、宿の玄関でひろしが日本人女性2人と話をしていた。
そういえば宿を決めた時にもいた2人である。
そのまま私も輪の中に合流し、部屋で飲む流れになった。この2人は オリエ&チハルちゃんであった。4人でお酒など買出しに行くと今度は この2人の友達と遭遇。巧ニ&細川嬢であった。不思議な流れで計6人で 部屋飲みする流れになった。

そして宴会が始まった。静かな安宿でバカ騒ぎする日本人6人。異国の地で 不思議な出会いで飲むことになった連中であったが、これぞ放浪の楽しみ。
妙にテンションも上がった。時刻は深夜2時を回っていた。
しかし、まだバンコクに着いて初日。多少の疲れがあった私の記憶は ブツッと途切れた。




・・・・・・・




気が付くと朝であった。部屋には泥酔した私とひろしが寝ていた。
他のみんなはいつのまにか各自の部屋に帰っていた。
なぜかひろしはベッド、私は地べただった。顔には枕にしていたらしい 「地球の歩き方」の跡が直角に残っていた。

それにしてもなかなか予想外な初日で面白かった。


~「バンコク到着」おしまい~


バンティッププラザ
昨晩のアルコールがまだ残っていたが、かといってぼ~っと部屋で 寝てるのはもったいないなと思った私は、
朝10時に気合一発!街に 出た。目指すはバンティッププラザなるショッピングセンター。
ここは「地球の歩き方」には載ってなかったが、インターネットで バンコクについて調べていた時に偶然発見した
スポットである。
ネット上ではこう紹介されていた。
「バンコクの秋葉原。海賊ソフトを公然と扱っていて、一見の価値あり」

宿の前でトゥクトゥク(オート3輪車タクシー)を捕まえ、20バーツ (約80円)で交渉成立。バンティッププラザに
向かった。

バンティッププラザは、外見はかなり大きめの建物だった。7階建てで 大きさは大型百貨店クラス。
とても海賊ソフトを扱っているとは思えない。
何はともあれ中に入ってみた。

「うわ、マジ?!」

建物の中はブースに分かれた小型店の集まりだった。その約半分が 海賊ソフト屋だった。数にして
100店舗くらいあるだろうか?
そして店内には、PCソフト・ゲーム・プレステ用ゲーム・ サターン用ゲーム等ありとあらゆる海賊版
CD-ROMが販売されていた。
インターネットではさらに
「日本の正当な値段で計るならこの建物の中だけで 在庫もいれておそらく 1兆円分のソフトが販売されてる」
と紹介していたが、納得!確かにそれくらいあるほどすさまじい海賊の 山だった。

先進国と違って著作権というものが確立されていない東南アジア諸国。
海賊屋はフィリピンや中国でも見たことがあるが、規模がけた違い!
しかもそれらが一律500円程度で売られているのである。
「ウィンドウズ98」も
「フォトショップ」も
「イラストレーター」もすべて500円だった。

私はここで「著作権を侵害する海賊版反対」などという正論を述べる つもりはない。確かに著作権は必要な
ものであるのは認めるが、そういう 論争はそちらで飯を食っている方達におまかせである。
私はバンコクの生き方をを知りに来た放浪者であるわけで、知りに来た以上、 購入するのが筋。
私は「ウィンドウズ98」など何枚か購入した。

それにしてもこんな現状を見たらWAREZやMP3を小まめに探すのも バカらしくなる。
そりゃビル・ゲイツも怒るわな。

バンコク海賊話でした。


~おしまい~


タイ古式マッサージ
バンティッププラザを出た私は王宮とワット・プラケオを見学した。
カオサンの近場であったし、バンコクで一番の名所だけにここだけは 一度見ておきたかったのである。
カオサンから歩いて約2km。金ぴかの観光地であった。

約2時間ほど観光してカオサンに戻った。カオサンを歩いていると
「タイ古式マッサージ」
なる看板を発見!しかもカタカナで書かれているのが笑える。
歩き疲れているのもあったのでさっそく入ってみた。

店は整骨院みたいな雰囲気だった。しかし、おばちゃんが向こう向いて 眠っていて開店してるのか分からない。かといっておばちゃんを起こすのも 申し訳ないし………と玄関で考えていたら後ろから

「マッサージ?」

と声をかけられた。びっくりして振り向くと白衣を着た若いタイ女性であった。 おそらく店員なのであろう。

「YES!」

と答えると店の中に案内された。

「お!この子がマッサージしてくれるのか?」

と、ちょっとわくわくするとさっきまで寝ていたおばちゃんがむくっと 起きた。そして眠そうな目でにっこり笑って私を寝台に案内した。
ふぅ……。

しかし腕は確かだった!くすぐったがりな私であるが痛くもなく弱くもなく 抜群のマッサージであった。さすが伝統のマッサージ大国!
マッサージと注射と料理はやはり熟年のほうがうまい!
あまりにも気持ちいいのでうとうとしてきた。するとおばちゃんが私の 背中にぼすっと乗った。

ポキポキッ!

びっくりしたが痛くない。よく見ると天井に棒が付いていて、それで 体重を調整しているのであろう。すごい。

そのうち腕のマッサージになり、再びうとうとしだした時、

「ガチャッ」

店に新しい客が入ってきた。見ると白人だった。彼は私の横の寝台に寝転んだ。
彼には先ほどの若いタイ女性がついた。すると彼はいきなり上半身裸になった。

「なにぃ!!」

予想外の行動に驚いて見つめると、若いタイ女性は彼にオイルを塗り出した。
なんと!私のマッサージと違う!私はびっくりしてメニューを見た。
メニューは次のとおりだった。(Bはタイの通貨「バーツ」)

★Leg Massage 30 minite's 80B
★Leg Massage 60 minite's 150B
★Body Massage 30 minite's 120B
★Body Massage 60 minite's 200B
★Oil Massage 30 minite's 150B
★Oil Massage 60 minite's 280B

「むぅ……オイルマッサージ……」
なんと私がしてもらっているボディマッサージの上があるではないか!
しかもすごく気持ちよさそう。ちょっとくやしくなった。

ふと白人をみた。彼は私と同じくらいの歳っぽい。すると白人と目が合った。
白人はにこっと笑った。それはおそらく深い意味はない愛想笑いだった のだろうが、私にとってそれは挑発であった。

欧米諸君に負けるな日本男児!ボディマッサージの終わった私は たて続けにオイルマッサージを申し込んだ。おばちゃんはきょとんと していたがすぐさまオイルの用意をしだした。

私は上半身裸になり再び寝台に寝転んだ。隣の白人に目をやった。

白人は気持ちよさそうに眠っていた。




ちっ




1時間半ものマッサージを受けた私の体はクラゲのようになっていた。


~おしまい~